経費の立替払いの仕訳のやり方|3ステップと項目別の記入例

この記事では、申請から精算・支払までの仕訳を3ステップで示します。交通費や海外出張の換算、インボイス・消費税の扱い、領収書がない場合まで、私が現場で詰まった所を中心にまとめました。
所要時間の目安は、1件あたり5分ほど。必要なのは領収書(証憑)と、社内の精算ルールだけです。難易度は、簿記3級の知識があれば十分対応できるレベルです。
経費の立替払いとは?仕訳を始める前の前提知識

まず押さえたいのは、立替経費の仕訳は一般に『経費発生時(または申請承認時)』と『精算・支払時』の2段階で処理する、という型です。複数の会計実務解説がこの流れを示しています。
立替払いの基本的な流れ
従業員が自腹で電車賃や備品代を払う。会社に申請する。上司が承認する。会社が精算金を従業員へ振り込む。この一連が立替払いです。
仕訳の観点では、承認した時点で会社の費用と負債(未払金)が確定し、支払った時点でその負債が消える、と考えると整理しやすいです。
立替金・仮払金との違いを整理する
ここが一番混乱しやすい所です。正直に言うと、私も最初は『立替金』と『従業員の立替経費』を混同していました。
『立替金』は、取引先や従業員の代わりに会社が一時的に支払ったお金に使う勘定科目です。一方、従業員が会社のために立て替えた経費を精算する場面では、未払金を使う説明が一般的です。誰が誰の分を負担したのか、で勘定科目が変わります。
| 用語 | 誰が負担 | 典型的な勘定科目 | 精算の方向 |
|---|---|---|---|
| 立替金 | 会社が取引先などの分を一時負担 | 立替金 | 相手から回収する |
| 仮払金 | 会社が従業員へ先に概算で渡す | 仮払金 | 後で精算し過不足を調整 |
| 従業員の立替経費 | 従業員が会社の費用を一時負担 | 旅費交通費など/未払金 | 会社が従業員へ支払う |
個人事業主と法人での処理の違い
個人事業主の場合、自分で経費を払うので『立て替えて精算する』という発想自体が薄くなります。事業用の費用を事業用口座から払えば、そのまま経費計上で完結します。
法人は『会社』と『従業員』が別人格なので、立替→精算という二段構えが必須になります。この前提の違いを押さえておくと、仕訳の組み方で迷いません。
経費の立替払いの仕訳のやり方【3ステップ】
ここから実際の仕訳です。例として、従業員が電車賃3,000円を立て替えたケースで進めます。経費発生時の借方は内容に応じて旅費交通費などを使い、貸方は未払金、という型が実務解説の標準です。

手順1:従業員が立て替えたときの仕訳
申請が承認されたら、費用と未払金を計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 3,000円 | 未払金 | 3,000円 |
確認の目安はこれです。借方に費用科目、貸方に未払金が立っていればOK。ここで現金や預金を動かしてはいけません。まだ会社はお金を払っていないからです。
手順2:立替経費を精算するときの仕訳
精算の準備が整い、いざ支払う直前。ここで気をつけたいのが、小口現金などで申請と精算を同日に行う場合は仕訳が1回で済むことがある、という点です。
同日精算なら、手順1と手順3をまとめて『旅費交通費 / 現金』の1本で書けます。後日精算なら、手順1で未払金を立て、手順3で消し込みます。
手順3:精算金を支払うときの仕訳
従業員の口座へ振り込んだら、未払金を消し込みます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 3,000円 | 普通預金 | 3,000円 |
振込手数料が会社負担なら、貸方の預金額に手数料を足し、借方に支払手数料を別途立てます。たとえば手数料が110円なら、借方に支払手数料110円、貸方の普通預金は3,110円になります。
完了状態の目安。手順1で立てた未払金がゼロに戻り、借方の費用が帳簿に残っていれば、この手順で立替経費の仕訳が正しく完了です。
項目別・立替経費の具体的な仕訳パターン
立替経費は中身で勘定科目が変わります。経費発生時の借方は、旅費交通費・交際費・消耗品費・事務用品費・図書費などを内容に応じて使う、というのが実務の基本です。

交通費・出張手当を立て替えた場合
電車・バス・タクシーは旅費交通費。出張の日当(出張手当)も旅費交通費で処理するのが一般的です。
私の経験上、出張は『交通費』『宿泊費』『日当』を1件にまとめて申請されることが多い。仕訳では費目を分けて借方に並べ、貸方を未払金で一本化すると見やすくなります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費(交通) | 12,000円 | 未払金 | 27,000円 |
| 旅費交通費(宿泊) | 10,000円 | ||
| 旅費交通費(日当) | 5,000円 |
海外出張・外貨建て立替経費の換算と仕訳
競合記事で意外と触れられていないのが、外貨建ての立替です。ここは正直、つまずきやすい。
原則は、経費発生日(または支払日)の為替レートで円換算して計上します。社内ルールで『精算日のTTBで統一』と決めておくと、担当者によるブレが防げます。私はこの統一ルールを社内規程に書くことを勧めます。
なお、為替レートの根拠は領収書の日付や利用明細に紐づけて保存しておくと、後で説明を求められても困りません。
勘定科目別の借方・貸方の対比一覧
| 立替の内容 | 借方(費用) | 貸方 |
|---|---|---|
| 電車・タクシー | 旅費交通費 | 未払金 |
| 取引先との会食 | 交際費 | 未払金 |
| コピー用紙・文具 | 事務用品費 | 未払金 |
| 少額の備品 | 消耗品費 | 未払金 |
| 業務用の書籍 | 図書費(新聞図書費) | 未払金 |
立替経費の消費税・インボイス制度の取り扱い

ここは記事で一番伝えたい部分です。インボイス制度の登場で、立替経費の控除要件が変わりました。間違えると仕入税額控除が取れません。
立替分の消費税は対象になるか
勘定科目としての『立替金』そのものは、会社の本来の売上ではないため消費税の課税対象外とする解説があります。ただし実際の課税関係は取引の実態と証憑次第です。
一方、従業員が立て替えた『交通費』や『備品代』そのものは、課税仕入れです。立替という形式に惑わされず、中身の取引で判断します。
適格請求書の宛名・保存要件
国税庁は、取引先に経費を立替払してもらった場合、取引先名義のインボイスの保存だけでは仕入税額控除できず、『立替金精算書』により自社の仕入れであることを示す必要がある、としています。
実務に落とすとこうです。立替払いをしてもらった側は、相手のインボイスのコピーに加え、立替金精算書をセットで保存する。これがないと控除が否認されかねません。
電子帳簿保存法に対応した証憑保存の手順
電子で受け取った領収書(メール添付PDFやネット予約の控え)は、電子のまま保存する必要があります。紙に印刷して保管、では電子取引の要件を満たしません。
私が現場で回している手順はシンプルです。1.領収書を受領したらすぐPDF化。2.ファイル名に『日付_取引先_金額』を付ける。3.検索できる形でクラウドや経費精算システムに保存。これで取引日・金額・取引先の検索要件をカバーできます。
つまずきやすいケースと税務調査で指摘される間違い
仕訳は型どおりに進めば難しくありません。問題は、型から外れるケースです。ここを先に潰しておくと安心して確定できます。

領収書がない場合の対応と仕訳
電車賃や自販機など、そもそも領収書が出ない経費はあります。この場合は出金伝票や経路の記録(出発地・到着地・目的)を残せば、旅費交通費として計上できます。
逆に、領収書をもらえたはずなのに紛失した、は厳しい。金額が大きいと税務調査で説明を求められます。再発行を依頼するか、利用明細などの代替証憑を必ず確保してください。
未精算の立替経費を決算時に処理する
決算をまたぐ未精算は要注意です。3月決算で、3月に発生したのに精算が4月になる立替経費。これは3月の費用として未払金で計上します。
『支払った月の経費』にしてしまうと、費用の期ズレで利益が歪みます。発生主義で、発生した期に費用を立てる。これが原則です。
よくある仕訳ミスと指摘されやすいポイント
| ありがちなミス | 何が問題か | 対処 |
|---|---|---|
| 立替金と未払金を混同 | 負債の意味が変わる | 従業員精算は未払金で統一 |
| 精算日に費用計上 | 期ズレで利益が歪む | 発生日基準で計上 |
| インボイス控えのみ保存 | 控除が否認されうる | 立替金精算書も保存 |
| 私的支出が混入 | 役員賞与等と認定リスク | 業務関連性を申請時に確認 |
立替経費の精算を効率化する方法
仕訳のやり方が分かっても、件数が増えると現場は疲弊します。私が複数の会社を見てきて、効率化の効果が大きかった順に紹介します。

申請期間と上限金額のルールを決める
地味ですが効きます。『立替は発生から30日以内に申請』『1件5万円超は事前申請』のように、期間と上限を就業規則や経費規程に明記する。これで決算間際の駆け込み精算が減ります。
クレジットカードを利用する
私が一番勧めるのはこれです。立替の根っこは『従業員が現金で先払いする』こと。ここを法人カードに置き換えれば、立替そのものが減ります。
利用明細がそのまま証憑の補助になり、引落口座から自動で仕訳の元データが取れる。経理の手間が目に見えて軽くなります。
経費精算システムを導入する
申請・承認・仕訳起票・証憑保存までを一本化できます。電子帳簿保存法の保存要件も、システム側が満たしてくれる製品が多い。
ただし正直に言うと、月数件しか立替が出ない小規模な会社なら、システムよりカード+クラウド会計で十分です。件数と人数で判断してください。
手書き・Excel・会計ソフトでの仕訳記入例

会計ソフトを使わない現場もまだあります。ここでは手書き・Excelと、ソフトでの入力例を並べます。やることは同じ、入力する場所が違うだけです。
手書き・Excelでの記入例
仕訳帳の1行に、日付・借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額・摘要を書きます。摘要に『従業員名・用途』を入れておくと後で追える。
| 日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4/10 | 旅費交通費 | 3,000 | 未払金 | 3,000 | 山田 取引先訪問交通費 |
| 4/25 | 未払金 | 3,000 | 普通預金 | 3,000 | 山田へ精算振込 |
会計ソフトでの入力例
弥生会計などのソフトでも、入れる中身は同じです。仕訳入力画面で、借方に旅費交通費、貸方に未払金を選び、金額と摘要を入力します。
ソフトの利点は、税区分(課税仕入10%など)を科目ごとに自動で当ててくれること。消費税の集計ミスが減ります。
経費の立替払いの仕訳に関するよくある質問
取材や相談でよく聞かれる質問を、短く答えます。

よくある質問
最後に一言。立替経費でトラブルになるのは、たいてい仕訳の難しさではなく、証憑の保存とルールの曖昧さです。今日できる一歩として、まず社内の精算期限と立替金精算書の保存をセットで決めてください。仕訳はそのあと型どおりで十分回ります。
